◇講師の解説
1号刀と2号刀の刀は室町後期の片手打ちの刀と、戦国末期、永禄・元亀・天正という慶長新刀直前の刀の姿で、たった約70年で姿が大きく変化する。 この姿を覚えておくこと。3号刀、4号刀、5号刀は石堂派の刀である。
【1号刀】
この刀は当てるのはむずかしい。
姿をよく覚えておくこと。刃長約2尺2分、先反りがあり、鎬を盗んでいる。
刃紋は帽子の焼きが一枚風で、深く焼き下げている。 これはこの時代の備前物や美濃物の共通点で、棟焼もあるのが末古刀の見どころである。 古くは来一派にも棟焼があるが、棟焼のある刀は、焼き直しも多いで注意すること。
刃紋に角ばったところがあり、浅古當麻信長の札があった。高田にもこの姿がある。
刃長が2尺で身幅が頃合、先反りがあり鎬を盗んでいる末古刀の片手打ちの刀の姿を覚えておくこと。
【2号刀】
身幅広めで重ねが厚く、寸法が2尺3寸5分から2尺4寸で先反りが強い。鎬を盗んでいる。
元亀・天正頃の刀の姿である。この姿の刀は、関物では氏貞、大道、備前物では清光、源兵衛尉祐定や、金房や三品系の金道、また同田貫や天正打ちの國廣、政常や綱広にもある。
大切先で身幅が広く樋先が下がっているので南北朝期の太刀と見た人がいるが、南北朝期の太刀にはこのような先反りがない。
氏房の刀は鑑定刀にはなかなか使われないが、刃紋が大のたれに互の目で尖ったところがあり美濃伝であることをおさえておくこと。
美濃風ということで、出羽大掾国路の札があった。 地肌は板目が流れて肌立ち、何となくザングリとしているので國廣の札もあった。國廣にもこの姿のものはある。
氏房の刃紋の特徴は、尖った刃、箱がかった刃、いかつい刃で匂口締まるところと叢沸えで、バラバラになったところがあることを覚えておくこと。
【3号刀】
3号刀、4号刀、5号刀は寛文から元禄にかけて約60年間栄えた石堂一派の作品である。
3号刀の姿は寛文新刀。 すなわち、刃長が2尺3寸から2尺3寸5分で反りが浅く、元先の身幅に差があり、中切先、鎬地の柾目が顕著。
刃紋は焼に高低があり華やかな丁子、蛙子丁子乱れで、帽子は直ぐでたるみこんでおり、淡く映りも出ている。
古一文字と考えた人もいるかも知れないが、古一文字の場合は帽子と刃中に働きがあるはずであり、姿と地金が違う。 この刀には金筋などの刃中の働きがない。 石堂一派の場合は、通常丁子がこずむ物が多い。
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